術後五日目

朝、入って来たのが男性看護師でびっくり。
男性看護師がいるのは分かっているが
男性患者や介護が必要な高齢者に優先的に配されると思っていた。


うわ。お腹まではいいが、お尻まで見られるのはなあ。
でも医者だったら、むしろ男性医師の方がいいぐらいだもんなあ。
医療従事者に変わりはないんだから、医師でも看護師でも同じかあ。


だがお尻を見られらる前に
お尻の管が抜いてもらえることになった。
朝一番で医師が来てくれたのであった。


看護師が点滴のことばかり言うから「それより管だ」と言ったら、
「それは医師がいないと抜けません」「先生 今日来ないんですか」
土曜日である。「聞いてみましょう」と出て行ったが、
これまで「確認します」と言って、半日以内に返事がきたことがない。
あてにもしてなかったが、看護師より早く医師が来た。
そして抜いてくれた。お腹もお尻も。


あああ。人間に戻れた。


医師に確認し損ねたが、このお尻の管は患者全員に施されるものか、
たまたま私がそうだったのか。
考える原因としては、ダヴィンチくんの縫合ミスである。
医師としては突っ込まれたくないのか、訊く隙がない。
ダヴィンチくんのドジだとしても私は怒らないのに。
起きてしまったことは仕方がない。
直腸手術=お尻の管ではないと分かれば、逆に気が楽になるのである。
あれさえなければ、どうということはなかったのである。


まあ。あったから、そう思うのであって、
最初からなかったら、痛みや点滴がより以上に苦痛だったかも知れん。


夜、点滴も抜けた。


翌朝、ドレーンの傷口にテープを貼って、シャワーも可となる。
食事は五分がゆ→全がゆであるが、おかずはほぼ普通食であり、
栄養点滴を入れていたから、おかずだけでお腹は満足していた。
よって術後六日目で生活はほぼもとにもどったわけである。


一週間。人生で一番長いと思われた一週間だが、
過ぎてしまえば短い一週間でもあった。


看護実習生と話した。「希望の科とかあるの?」
「内定先では聞いてもらえるみたいです。外科を志望しました」
意外だった。ゆっくり患者と向き合いたいと思っていた。
「どうして?」
「回復が目に見えるからです。よくなっていくのが実感できるから」
ああ。「そっか。私もそうだったもんね」 「はい」
昨日と今日で確実に違う私。昨日できなかったことが今日できる。
来週にはもうここにいないけれど。


この後、解放の喜びに浸る暇もなく、「退院」コールが始まる。
家人「早かったな。早く退院したいだろ」
教官「退院 待ったなしですね」
看護師「先生から話あったー?」
あああああ。まずはゆっくり普通食を喰わせろ!