術後四日目① 緑便編

腸からの内容物は緑色に変化した。


「胃を動かす薬」を入れると緑便が増えると
「担当」看護師に訴えたら
「でもこれ胃だから腸には関係ないよ」と言われた。
そして
「食事が始まったら もっと(便もれの)量が増える」とも言われた。


この日の昼食から流動食が始まることになっている。
それを食べたらこれ以上に便が出てしまうのか。
もともとなかった食欲が更に減退する。


食べることが好きな私が「お腹が全く空かない」のである。
旦那も息子も最初に出た重湯をうっとりと飲んでいたというのに
とてもそんな気にはなれない。
高カロリーの点滴のせいかも知れないが
やはり(パットで支えているとはいえ)便もれの影響だろう。


医師が来る。
「この管は 最短でいつ抜けますか」
「明日にでも。今日食べてみて その結果次第だけどね」


明日! 嬉しい! でも食べないと結果は出ない。
食べられなければ抜いて貰えない。
食べたら便は増える。これ以上増えたらパットでも洩れることはあり得る。
あり得るがしかし 食べなければ始まらない というか 終わらない。


運ばれて来た昼食を見てたまげる。
スープの器ひとつかと思ったら!
かき玉汁 ポタージュ 乳酸菌飲料 ゼリー
かき玉汁は美味しかった。とても。でも全部飲む勇気はなかった。
おおむね半分残す。


ところが。
食事が始まると同時に緑便は減った。じきになくなった。
医師は「緑便は胆汁」と言った。
看護師が「胆汁は消化に使う」と言った。
そういうことか!
行き場のなかった胆汁が流れ出ていたのか。それを消費するようになったんだ。
だから食事が始まる=便が増えるにはならない。
一度減って、それから改めて本当の「便」が出始める。


理屈が分かれば緑便に対する意識も、
「緑便」じゃなく「消化するものがなくて困ってる胆汁さん」に変わり、
なんとなく気が楽になったんじゃないか。
緑便が胆汁、胆汁は消化、消化すれば胆汁を消費し緑便は減る(かも)。
看護師ならそれくらい分かりそうなものじゃないか!


「食べ始めたら便は増える」と聞かされていなければ
あのかき玉汁全部飲んだのにいぃ。
「担当」看護師への不満は数あるが そこに喰い物の恨みが積み上げられた。