甘えんじゃねえ

まご男が転んでケガをした
と娘から電話が入る。
病院に連れていくから来てほしい。


いつもの小児科では断られた。
初診の外科内科の病院に電話したらOKだった。
初診だから問診票とか記入しなければならないだろうと
待合室までついていった。
まご男を抱っこして娘と並んで座っていたら看護師さんが来た。


「えっと どういうご関係ですか」
「母です」「祖母です」
「えっ 園の先生ではないのですか」
ちゃうよ。血のつながった三代だよ。


傷は小さかったが縫うことになった。
「お母さまは外でお待ちください」と廊下に出された。
見物する気満々だった娘はがっかりだが
中には卒倒するお母さまもいるらしい。
廊下で待つも、泣き声は聞こえない。


泣かなかった。母親が傍にいないのがよかったか。
出てきたまご男は、いつもと顔つきが違う。
「男になったぜ」という顔である。


帰宅後、娘は己の判断と行動を自画自賛した。
婿さんじゃこうはいくまいと。「男は血を見るとパニクる」
「いやいや あんただって 私らがいなければ慌てたはずだ」
いざとなれば電話一本で飛んでくる存在があるから落ち着けるのだ。
自分一人で乗り越えた気になるな。


娘が電話してきたのはケガした直後である。



話変わって。
家人が管理組合の会合に顔を出した。
来期の議長候補たちがあれこれ理由をつけて辞退したがる。
「なまじ あんたらが顔を出すからいかんのじゃない?
甘えだよ。ごねれば誰かがなんとかしてくれる」
子どもじゃあるまいし。


ったく。どいつもこいつも。