外科医の返事はふたつしかない

図書館の書棚から何気なく抜き出した
中山祐次郎の小説が面白かったので
他の著作を予約してみた。その一冊「医者の本音」。


その中に研修期間だったかに先輩医師から言われた言葉。
「YESか はい だ」「え?」


それを読んで「ああ!」と納得した。
だから、「外科医」が「外科医」的に育つんだ。


確かに「ここを切れ」と指示され「いやあ こっちの方が」
なんてやっていられない。
内科なら「どうして こっちの薬じゃいけないんですか」
と言っている猶予もあるが、外科の現場では「はいっ」以外ない。
だからなんだろうが…


消化器外科の医師が主治医。
若い女医せんせいなので権威的な圧力も冷淡さもないけれど
NOどころかWHYも言わせない空気がどこかにある。


「それは…」といえば「どうしましょうか」と訊いてくれるし
大抵のことはなんとか聞き入れてもくれる。
それでも である。


指導医と研修医の関係が「ふたつの返事」であるように
外科医と患者の関係もそこから始まるんだな。
質問したり要望を告げることはできるのだけれど
スタート地点は、そこなんだよな。



「医者の本音」というタイトルほど本音は分からず、
内容も、既に時代に即していない気がした。
「女性外科医はいない」とあるけど、通院先だけで3人はいるし、
なにより気になったのは
「執刀医への心づけ」が現代でもあるという記述だった。
これらは地域差なのだろうか?


まあ「返事はふたつしかない」が読めただけいいけどさ。