まご男の上に君臨する日

まご男と留守番。
パズルを披露していただき、
その後ままごとの相手をさせていただく。


どうして「いただく」なんだ。
なんとなく。
なんとなくそんな感じなのである。
まご女と遊ぶ時と何かが違う。


言語による意思疎通がないことではない。
抱き上げた時の重量感でもない。


私は孫と遊ぶ時、主導権は相手に渡す。
その中で遊びを発展させたり新しい設定を作ったりする。
まご女は彼女なりに取捨選択し、あるいは咀嚼し、吞み込んでいく。
この、彼女を尊重した上での提案を彼女は求めている(と思われる)。
しかし、まご男はそんなものは欲していない。
与えられた主導権を彼は決して手放さない。


彼は長男ではあるが、二番目の子であり末子である。
結構強烈な個性をもつ姉の弟である。
自己主張はするが、姉の影響力は大きいように見受けられる。


その姉が私に抱いている敬愛を、なぜこやつは受け継ごうとしないんだ。


帰宅後、考える。
まご男にとって私は「新参者」なのだ。
会わないでいた半年以上の間、まご女は私を忘れなかったが
こいつは違う。
二日間近づこうとしなかったほど、きっぱりさっぱり忘れていた。
改めて関係を結び直さなければならなかった。
そう。
彼にとって私は「認めてやった存在」なのである。
つまり彼より後にやって来たもの、彼より下に属する者なのである。


冗談じゃねえ。
私はこの共同体の中での頂上だ。
最下層のお前の下に置かれる筋合いはない。


昼ご飯。
まご男は自分が水を飲むたび、
私に向かって「のめ」と身振りする。
最初は合わせて水を飲んでいたけれど、段々苦痛になる。
けれど実行するまで彼は諦めない。
カップの水を飲む。それだけでは終わらない。
「ぷはーっ」とやるまで彼は見ている。
見届けた後、彼も「ぷはーっ」とやる。そしてまた食べ始める。
彼が水の入ったコップを手にするたび、私もカップを持ち上げる。
上司と同席した新入社員である。


この関係を是正するにはどうしたらいいのだろう?