息子と娘と 生八つ橋と

金曜夕方息子から電話。
仕事で京都にいっているはず。なにごと?
慌ててとったら「別にこれといってないんだけどさ」。


じゃなんだよ。
「姉ちゃんにさ 京都の土産で何か要る?って訊いたんだ」
「うん」
「生八つ橋」
「だろうね」


娘の好物である。
かつて息子は大のお姉ちゃんっ子だった。反抗期が始まる中1まで。
それ以前の小学校の修学旅行の時、息子は姉(だけ)のために
お土産で二箱(一泊目と二泊目で)生八つ橋を買って帰った。
今回も訊けばそう返ってくることは分かっていた筈である。


「普通さ 悪いねとかありがとうとか 言わんか?」
言うはずがない。娘が弟に。「まご女は食べられるか訊いたら」
「訊いたよ! 食べられるって!」


事前に彼と私の間で以下の会話があった。
「姉ちゃんの遺伝子で 姪こも好きかな」
「食べさせてもらえるかどうかが問題だね」


まご女は3歳半になるが、餅もチョコも刺身も食べさせてもらっていない。
野菜でもなんでも食べる子だから
嗜好品的なもの(刺身は嗜好品だろうか)を与える必要がないのである。


だが「食べる」と言ったからには与えるんだな 娘。


「じゃあ 買っていけばいいじゃん」
「そうなんだけど 店 何時までやってるかな」
「は お土産屋ならどっかやってるでしょ」
「いやいや 〇〇本舗とかで買いたいからさ」
……知らんし。


以前に美容院で(息子も行っている)
「昔はあの子 お姉ちゃんっ子でさあ」と言ったらば
オーナーが「今もでしょ」とさらっと言った。


その「昔」のことである。
娘が友人と児童館主催の日帰り旅行に参加した日、
昼食に寿司を買って来た。
さあ食べようとしたら息子が「待て」と言う。
箸を持って私と家人が「何?」と訊くと
「姉ちゃんの分 とっておかないと!」。
「あいつは遊びに行ってるからいいんだよ」
日帰り旅行の費用は当然家計費払いである。
しかし息子は台所から大皿を持ってきて、
「姉ちゃんが好きなのは これとこれと ああ これも」
と取り始めたのであった。
かくて私らは、せっかくの大桶の寿司を穴だらけの状態で
食べ始めることとなった。


そうだね。今もだね。
私らのところにはそこらの土産店のものを持って来ても
娘のところにはブランド品を持参したいんだね。
息子は姉に褒められるのが一番嬉しいんだ。