ドイツの思い出

ドイツ料理店をひとつ見つけた。
何度か行ったことがある老舗とは違う、
家庭料理がメニューに並んでいる。
これは是非!というが ちと遠い。


家人が「あの店 閉店だ」と言った。
その「老舗」の方。
最後に行ったのは何年前か。息子も連れて行った。
コース料理を嫌う息子が、珍しくついてきた。
したらば「ご飯」のサービスがあった。


ご飯といえば
和食の老舗店で会席を奢ってやった。ご飯が最後に出る。
足りなくて「お替りを」と頼んだ。
愛想のいい仲居さんが一膳だけお盆にのせて持って来た。
「どうぞ お坊ちゃん」と息子に渡す。
「…すいません。人数分 ください」 おひつでもよかったのに。
待っている間に、残しておいたおかずに手をつけてしまい、
届いたご飯に料理の汁をぶっかけて食す。会席が泣くよ。


じゃなくて。


ドイツの家庭料理を、ローテンブルグで食べた。
卒業旅行の時。添乗員さんがドイツ留学経験者で
それまで頼りなかったのにドイツ語圏に入った途端張り切って
コースにはないサービスをいくつか提供してくれた。
そのひとつ。


ローテンブルグの街は
ヨーロッパに疲れた私たちの気持ちを安らげてくれた。
ローテンブルグのホテルは何か出そうで怖かったけど。


どの都市か忘れたが
なんと! スイートルームが振り当てられた。
ツアーだからして。
他の参加者と比べても、いい部屋だったり悪い部屋だったりすることがある。
とはいえ、まさかのスイートルーム。


そんなこととは知らず、指定の客室に向かった私と友人。
両開きの扉を見て、それだけで「ここは客室じゃない」と判断した。
フロントに戻って抗議する。間違えて会議室の鍵渡したね!
フロントマンが笑いながら私らを部屋に案内し、ドアを開ける。


椅子がいくつも並ぶ円形のテーブル。
部屋の隅にはバー。
ほらみろ。
ホテルマンは他のドアを開ける。ベッドがあった。
また開ける。またベッドがあった。「ベッドルーム」
ここで漸く理解した。すいませんすいません(日本語だ)と
汗をかく私らに、彼は「バスルーム」「なんちゃらかんちゃら」
と全部のドアを開けて説明した。


彼を見送った後、ツアー内の知人を呼び集め、室内を披露した。


ノイシュバンシュタインとかビアホールとか
古城とか回った筈だが、
覚えているのはこの部屋とローテンブルグのホテルのロビーである。


私はローレライを三番まで歌える(日本語で)。