嫌われない(娘の)強気

「嫌われる勇気」という本がある。
私は読んでいない。


娘に新しいママ友ができた。転勤族さん。
この本の話題になった。娘は読んだことがある。
「なんでこんな当たり前のこと書いた本が売れるんだろう」
と思ったらしい。
まるで自分の解説書だと感じたとな。
一方ママ友さんは「こういう考え方もあるんだあ」と
周囲に気疲れしている自分を省みたという。


娘は
自分は、嫌なことは嫌だと言うから
相手が嫌だと言わないのは嫌じゃないからであると
平気で無理な頼みごとをする。
その代わり断られても平気である。
しつこく確認することはあってもな!


ちょっとした集まりの幹事をよく引き受けていた。
私はあちこち配慮するのが面倒だからやりたくないのに。
「どうして引き受けるの」と訊いたら、
「へ? 行きたい店が選べるじゃん」とさらりと言った。
そこは苦手だと言う人がいれば変更すればいいだけだと。
私は(多分そのママ友さんも)(その店は嫌だと)
言えない人の本音まで探ろうとして疲れてしまう。


職場で「穴が多すぎる」と言われたと前に書いたが、
他にもいろいろ同僚から言われている。
アングリーマネジメントを揶揄って「〇〇リーマネジメント」
とか。〇には娘の名前が入る。
そうぼやきながらも娘をうまくマネジメントしてくれる。


教員の研修会か何かに出席した時
たまたま駅への道で並んで会話したおじさん(教員)が
「この店の〇〇が美味しいんですよ」と言ったから
一緒にご飯を食べたと言う。
初対面のおっさんと!
「注文がなかなか決められなくてさ。おススメは〇〇なんだけど
私は△△が食べたくて でも〇〇も気になって」
ありがち。
「したら その人が 〇〇大盛りで頼んで分けてあげるって」


……


「貰ったの?」「あげるって言うんだからいいでしょ」
いいのか。
「傍から見たら変な組み合わせだよねー お互い敬語でさ」


私は娘を「妖怪ひとくち女」と呼ぶ。
妖怪二口女 というのがある。頭の後ろにも口があるのだが
娘の場合はすぐに「ひとくち頂戴」と言うからである。
まさか他人さまに、それも初対面の年上の異性にやらかすとは。


娘にとって己れの欲求が一番である。
誰しもそうだと思うから、平気でそれを前面に出す。
ぶつかるならばぶつかって解決すればいいと思っている。


言えない人の気持ちなど分からない。


私は「言えない」側の人間ではあるが、
だからといって「嫌われる勇気」を読みたいとも、実践したいとも
思わない。私は別に嫌われることを恐れてはいない。
自分が好かれる人間だと思っていないからである。


気を遣うのは、
自分のせいで誰かが困ったり不快になったりするのが嫌だからだ。
「私なんかのせいで」。
自分のために誰かの手を煩わせるくらいなら自分で動く。我慢する。
一方で
そういう風に考える誰かのためには、でも何かしてあげたい。


娘には理解できんだろうなあ。
他人が自分のために何かをするだけの価値が自分にはある
ってのが根底にあるのかなあ。
彼女は「父親に愛された娘」だし。


娘は友人が多い。生徒にも慕われている。
新しいママ友さんともうまくいくだろう。


気疲れの彼女が娘の根性を少しでも学んで、
次の転勤地に向かってくれたらと思う。