お茶席の おはぎ

茶道を習っていたことは書いたっけ?
習っていたのである。意外と長く。
基本的な作法だけ覚えればいいと思って始めたのだが
奥の深さにはまり込み、地方講師級まで続けた。


通っていたのはカルチャーセンターだが、
月に一度先生宅で希望者のみの研修がある。
そこで炭手前とか利き茶とか茶通箱とかを習った。


別の教室で、もっと本格的に習っていた友人が
「お茶券があるの。行かない?」と言った。
由緒正しき神社でのお茶席である。
着物でなくてもいいと言うので行くことにした。


煎茶・お薄・濃茶とそれぞれ茶室が用意されており、
順に回っていく。
濃茶の時だったか、友人の師匠の、更にその上の師匠と一緒になった。
「大先生」である。
どさくさに私は、友人と大先生の間に座ることとなる。


出て来たお菓子が、おはぎ。
由緒あるお茶席でおはぎ? それも特大の。
懐紙一杯に横たわる姿はなかなかのもので、
それを食すにもなかなかの技術を要する。
そして私にはその技術がなかったらしく、端からぼろぼろ落ちるのであった。


友人の側に落ちればいいものを、あんこたちは大先生の方に転がる。
大先生はご自分の懐紙を広げ「あらあら大変。あらあら」と
お上品に言いながら丁寧にあんこを拾い集めて下さる。


私は何とか早く食べ終えようとするのだが、その間にもぼろぼろ。
「すいません すいません」「あらあら」「ああ すいません」


遂に友人が私の後頭部をはたいた。「食べるのやめいや!」



私が行くような場所ではなかったのである。
誘った友人が悪い。
とひらきなおることもできず、
内心で申し訳なく思っていたのであるが、


友人に確かめたら、彼女はきっぱり忘れていた。
あれえ?