娘の留学 こぼれ話

送金用の口座を作って貰います
と言われていたが(で現地で作ったが)、
クレジットカードがあれば必要なかったりする。
少額の買い物もカード払いだし、
限度額を引き上げておけば旅行にも対応できる。
だが、そんな大事なカードを娘は忘れていくところだった。


出発の朝、支度を済ませた娘に「忘れ物はない?」と訊いた。
ふと思いつき「クレジットカードは持った?」と訊いた。
娘はきょとんと自室に戻り、カードを一枚持って来た。「これ?」


出立は真夏だったが、現地はすぐに寒くなった。
秋冬物を送れと言う。簡単に言うが簡単じゃない。
〇〇 △枚 ×××円相当 といちいち詳細を書かないといかん。
〇〇に入るのは英語である。
食料品も入れる。〇〇に該当する英単語を調べないといけない。
一覧を作って伝票に貼付する。


クリスマスに招待を受けたファミリーへのプレゼントも送った。
和食器やアニメグッズ。お好み焼きの材料や餅や海苔など。お菓子。
〇〇に該当する英単語を調べる。頑丈な箱を貰いに薬局へ行く。


娘に代わってパナや全日空に電話する。
丁寧かつ親切な対応に「日本企業っていいな」と日本にいながら思う。
本当に細やかで、最後まで丁寧な口調だった。


帰国する。
夢から現実に戻って落ち込むか腑抜けるかと案じたが、
そんな暇もなかった。
とってきた単位の振替や前期の履修登録やあいさつ回り。
持ち帰った資料の整理。などなど。
ふたつのスーツケースが広げられ、ちっとも片付かない。
気がついたら、出発前の日常がそのまま続いていた。


留学なんて人生の一大事みたいに考えていたけれど、
終わってしまえばひとつの経験に過ぎない。
でも、娘にとってはどうか知らないが、
私にとっては大切な思い出になってる。経験させてくれてありがとう。


私のスーツケースはくそ重い資料を詰め込まれて昇天した。