通知表の◎

子どもたちの頃、小学校の通知表は◎○△表記だった。
娘の時は、◎の数が気になった。
「頑張って増やしていこう!」


だが、いくら頑張っても増えない。
小テストで地道に9点を重ねても、55点だった算数で90点とっても。


その頃には、面談などで担任の人柄も分かってきた。
私 「いろんな子と遊べるようになりました!」
担任「まだまだですけどね」


私 「前の席に変わったら授業がよく分かるようになったみたいです」
担任「後ろの席で集中できない子は落ちこぼれます」
などなど。
つまり、そういう人だったのだ。
肯定から入れない人間に振り回されるのはバカらしい。


私は娘に言った。
「もういいわ。あんたが頑張ったことに変わりはない」


その後、担任に恵まれ娘は伸びていった。◎の数に一喜一憂することもなくなった。


にも関わらず、
ある年。
我が家で◎の数が重要な意味をもつこととなる。


それは冬休みを前にした日のこと。
子どもたちが「フグが食べたい。食べてみたい」と言い出した。
ぬな。
「では 二人合わせて◎が20個あったら ご馳走してあげよう」


そして終業式。
娘が駆けこんできた。「やった! 18個!」
おお。さすがの息子も三個以下ということはあるまい。
これでフグは確定だな。娘の喜ぶさまに私も二重に嬉しい。


そこへ息子が帰ってくる。
「いくつ?」 
「……1個」


開いた通知表の、ど真ん中。図画工作の中にひとつぽつんと。
あとは全部〇。体育すらも!


……なんでやねん。