家人(夫)のこと

やさぐれた私を宥めて世話するとことか、
私がG扱いする父を世話するとことか。
もしかしたら訪問者さんたちは彼を誤解しているかも知れない。


家人は基本的に「抜けている」。
昔の話シリーズ最終回(……)で書いた火葬場での話がいい例だ。


年末。鏡餅を買って来てと頼んだ。「ひとつでいいよ」
私はパック餅が好きではないので、28日生もちを買う。
店から家人が電話してきた。「ひとつだけは買えない」
「なんで」「ふたつじゃないと売れないって言うんだ」
そんなバカな話があるか。
……ありません。家人の「ひとつ」は「餅ひとつ」。
店員さんの「ふたつ」は「餅ふたつでお鏡ひとつ」。
鏡もちの下だけ(もしくは上だけ)買ってどないすんねんっ!


長女妊娠中。
「お タケノコだ。タケノコ喰え」
「あんま好きくない」
「お腹の子にいいんだから」
「そうなの?」
「おお。我はたけのこ って言うだろ」
……それ 我は海の子。ってか全然関係ねえし。


彼は英文科卒。
「ワーズワースとか 諳んじないの」
「俺 日本文学の方が好きだもんな」
「たとえば」
「中原中也」
「たとえば」
「忘れちまった悲しみに」
……それ 汚れちまった悲しみに。忘れる以前に覚えてませんね。


CMで「ワンフィンガーで吞むもよし」とやっていた頃。
「ツーフィンガーで飲むもよし」
彼は下戸である。
麦茶をワンフィンガーツーフィンガーで飲んでどうする。
「何やってんの それで 美味しいの」
彼はグラスを持つ手を見せる。
「?」
「ワンフィンガー」
はい? まじまじと見る。親指と人差し指だけで持っている。
「ツーフィンガー」 中指を添える。
……それ 違います。


欠食児童の話をしていたのだが、どうも食い違う。
「血色いいんだから 栄養充分だろ?」
現代では死語だろうが、彼は私より6歳年上である。



まいきょにいとまがない。彼はこれを変換できないに違いない。