この仲間と

WBC、終わった。
家人は孫の子守に駆り出され、決勝戦を観ることができなかった。
娘の家にはテレビがない。あっても子守中に観ることは許されない。
仕方ない。
代わりに私が見ておいてやろう。
家事雑事をしながら、画面を確認して、経過をメールで送る。


準決勝ほどの熱はなかった。
勝っても負けてもどっちでもよかった。
準決勝は「負けたら終わる」。
決勝は「勝っても負けてもどのみち明日はない」。


「このチームでもう一度があるかどうかが大事なんだ」と家人に言った。
家人には理解できないようだった。



娘、中3。県大会進出を目指していた。
剣道部。中学から始めた生徒ばかりの、2級軍団。
防具も備品で、大会用の綿タオルさえ足りなくて、使い回す。
「汗と各自のシャンプーリンスのにおいが混じって臭いのなんの」
そんなんで勝てるのか。


負ければ引退。


勝てば、少なくとも県大会までは部活を続けられる。


息子の野球の試合さえ見に行ったことがないのに
(野球部はそういうところウルサイ)、私は応援に行った。
運よく顔見知りの卒業生を捉まえることができた。
とてもいい子で、ずっと隣の席で解説してくれた。


「大将戦だ…」 先輩が言った。
「はい?」
「〇ちゃん(娘)で決まる。二本とらないと だめ」
「はいいい?」
「決めれば 県大会」


この仲間たちと一日でも長く剣道をして欲しい。
もう声も出ない。両手を握りしめて、息を詰める。


順位じゃない。一日でも長く。それだけ。



県大会は二回戦で敗退。



どんなことにも終わりはくる。どんな結果でも。
けれど頑張ったことは消えない。思い出は残る。




余談だが、
姉は中学で県大会、高校でインターハイと国体の土を踏んでいる。
両親は何も言わなかった。