ハムスターから某ジャンル

ハムスターを飼い始めたのは、子どもふたりが入園後。
子育て第一段階からの解放と、
ママ友関係第二段階からの逃げ場を求めてのことが重なった。


ママ友関係第二段階というのは、共感から競争へ、ということだ。
ああ面倒くさい。
幼稚園における競争意識は、能力の差よりも「交友関係」。
砂場友だちから卒業し、いかに世界を広げていくか。
新しい「おともだち」を開拓していくか。


私は「おともだち」という言葉が大嫌いになった。今でも。
ネット上でも「ともだち」という言葉を使われるとイラっとする。


ハムスターは(何度も書く)孤高の生き物だ。
なわばり意識が強く、親子といえど共に暮らせるのは離乳まで。
夫婦関係は繁殖のためのもの。兄弟でも殺し合いをする。


あの平和な顔したのんびり屋さんが。


金之介・銀熊・ハイジ・ゆき・金太郎(金之介の影武者)
その後シンデレラという中毛ハムを買う。
銀色に近い灰色のとても美しいハムスターだ。
美人薄命だった。シンデレラは「灰かぶり姫」。
その後「きん」というオスを買った。オスはこれだけだ。間違えたのだ。
最後に飼ったのが多分、ロボロフスキーだろう。


卒園すれば、ママ友とは縁が切れる。というか切っても困らない。
息子の卒園とともにひきこもりになってもいいのだ。
どっぷりと某ジャンルにはまる。マンガとアニメ。今でいう沼化した。
ワープロからパソコンに移行して、ワードすら使いこなせなかったのに、
「ホームページを作る!」という一心で勉強した。
お金をかけない! だからソフトも買わない! じゃあどうするか。
ワードで作り、無料FTPで無料サーバにアップする。
回線はダイヤル。プロバイダも無料で接続不安定。もうしっちゃかめっちゃか。


おかげで嫌なこと忘れた。
植木も育児も、適度な距離と手抜きが必要だったらしく、軌道に乗る。
1・2年の担任に「おともだちがふえませんね」と言われ続けた娘も、
3年の担任は(他の父兄にだが)「友だち? 一人いれば十分じゃないですか」
と言うような人で(評判はむちゃくちゃ悪かったが)救われた。
4年の担任は優秀な女性教師で娘のやる気を引き出してくれた。
私は安心して沼に首まで浸かった。


ある日、息子が訊いた。
「おかあさんの頭の中の半分は 〇〇(某ジャンル)で一杯なんだね」
「半分? なんてこと言うの!」と私。「8割だわ」
「ええええ じゃ △△(一人称)たちのことは2割?」
「何言ってるの。家事雑事実家! ハムちゃん! あんたらなんて
5パーセントがせいぜいだね」
息子は泣いたが、知ったこっちゃねえ。



常日頃、お金がないお金がないと我慢させておいて、
ハムスターには湯水のように使った。
新しいエサを見つけては買い、新しい玩具を見つけては買い。
公園の砂場に散歩に連れていけないかとリードまで買い。
次々と大きなケージに買い替え、回し車も数知れず。
ハムに板をやりたいばかりにかまぼこを買って子どもたちに食べさせ、
かぼちゃは種を見て買った。
それでも文句ひとつ言わなかった子どもたち。


某ジャンルに関しても寛容だった(はずだ)。


自分の分だけキャラの定規を買ったことを日記で暴露されたけどな。
娘が担任に提出する日記に「おかあさんが自分の分だけ買ったので
私たちの分を買うまで没収することにしました。なんて親でしょう」と。
先生のコメント「暖かい目でみてあげてください」。


ああ。楽しかったなあ。