ハムスターの思い出

本命記事を書いたから、いいやんね。


わくわくするのは、ハムにおやつをあげる時。
みかんを剥く。適当な大きさの房を選び丁寧に筋をとる。
(とる必要は全くない)
テーブルの上に置いて、自分の食べる分の掃除を始めた。
横を通りかかった娘(当時小学生)が、ひょいとテーブルから取り、
「〇ちゃ~ん」とハムの名を呼びながらケージに向かう。
娘は自分の分のみかんを既に食べた後である。


なんて奴だ!
だが怒鳴っても戻ってこないことは分かっている。
努めて冷静な声で、
「待って。こっちにもっといいのがあった。こっちにして」
娘が戻る。その手からみかんを取り上げ、
自分の分もろとも抱え込む。娘がとびかかって来る。
奪われまいと全部口の中に押し込んだ。娘が圧し掛かる。


息が出来ない。


「これで死んだら 新聞にどう書かれるんだろう……」
いやまじで。死ぬかと思った。苦しかった。
娘に「おとなげないにもほどがある」と叱られた。



金之介を買った半年後ぐらいだろうか、銀熊を買った。
神経質な仔だった。
やっと見つけた理想の巣箱(文鳥用だが入口が広い)を、
金之介と銀熊のケージに入れた時、金之介はすぐに潜ったのに、
銀熊は見ないふりして必死に回し車を回していた。
神経質だから人間にも慣れないのだが、
なぜか散歩中、呼ぶと物陰から出てきたりする。
金之介は「人間に近づくと掴まって戻される」とばかりに、
一度外に出すと寄り付かないのだが、銀熊は寄って来る。


その銀熊が、散歩中いなくなった。どれだけ探しても室内にいない。
ベランダに? どうやって! 「あんた 外に出たねっ!」
「でもちゃんと気をつけていたよ」「あんたの目なんか節穴だわ!」


ハムスターが外で生きていけるわけがない。
半べそかきながら、ケージをベランダに出す。
ハムはなわばり意識が強い分、帰巣本能も強い筈だ。
とはいえ、ベランダづたいに隣の隣の隣の部屋まで行ってしまったら、
においを辿ることも出来ない。
洟をすすりながら、チーズを手にベランダを右往左往していると、
「おい!」と家人が呼んだ。


振り向くと、銀熊がサッシから室内に入っていく姿が見えた。



銀熊に続いて、ジャンガリアンを買った。二匹。
一般的なグレーと、パールホワイト。パールは当時まだ希少で、
一匹5000円。普通のハムは1000円程度。
グレーは「灰次郎」、パールは「雪之丞」と命名。ハイジとユキ。


何かで読んだか勝手な思い込みか、
「ジャンガリアンなら多頭飼いできる」と同じケージ入れた。
仲良くしているように見えたが、ユキが衰弱していった。
5000円があ! というわけじゃないが、慌てた。
とりあえず隔離して、プラケで大事をとる。
一時は諦めたけれど、回復していった。ケージを買いに行く。


本棚の本をぼろぼろにしてくれのは、こいつらである。
私の「十字架への道」(だったかな?)など写真集をボロボロにし、
家人の「徳川家康」文庫をボロボロにした。
徳川家康に関しては「まあ 今更」とそのまま好きにさせた。
どうせ積ん読だろ。



多頭飼いできるのはロボロフスキーだけである。
小さくてすばしっこいので他のハム以上に「観賞用」である。
飼った筈だが何も覚えてないのは多分そのせいだろうなあ。
名前さえも思い出せない。本当に飼ったのか? あれ?