「金」と書いて「きん」と読む

金である。きんである。ゴールドである。


話せば長いことながら(この段落飛ばしてもよろしい)
10年以上前のこと。実家で掃除をしていたら娘が声を掛けてきた。
「これ おじいちゃんからもらった」と何やら金色のものを差し出す。
チョコレートだ。スイス土産か。
(スイスの免税店に金塊形の箱に入ったチョコがあった)
受け取ったら重い。「はあ? チョコじゃないやん!」
気配を感じて振り返ると、父が苦い顔をして立っている。
『おかあさんには内緒って言ったのに』という顔である。
小遣いを渡す時にいつも言う。しかし。500円の小遣いとはわけが違う。
兄弟で不公平が生じるのはよろしくない。
「弟と半分コね」 だからチョコじゃないって。
そのまま保管した。私が。
とはいえ。
将来「いつ売るか」ということで喧嘩になっても困る。


分割しますという広告を見て店に持ち込んだ。
一人分ずつにしておけば揉めごとは避けられる。しかし。
「引き受けられません」。
一般的な刻印がない。出所が全く分からない。見たことがない。
とのことだった。
買い取ることはできるという。


売るとなると税金がかかる。
200以上の取引は店から税務署に報告する義務がある(らしい)ので
ごまかしようがない。はなから脱税するつもりはないけれど、
申告がメンドクサイ。
「一度現金化した方がいいだろう」という点では一致するものの
誰の名前で売るか(確定申告するか)を家人と押しつけあう。


出所が不明ならば取得額も不明である。
この場合売却額の5%と見做される。株の簿価と同じだわ。
いくら税金でとられるんだろう。不労所得だからいいけどさ。
申告がメンドクサイ。


調べないと見積もりは出せないと言われた。
中身は金じゃないかも知れないし(笑)。
外からではわからない場合、切るかもと承諾書も書かされた。


メンドクサイが、今回思い立ってよかったとは思う。
子どもたちにこんなメンドクサイことさせたくない。
自分が相続の時に散々嫌な思いをさせられたから
子どもたちには余計なものは遺したくない。


最初から娘じゃなく私に渡してくれていたらよかったんだ。
ああ腹が立つ。
ゴミを始末し、汚れた水回りを掃除し、あれこれ采配していたのは私。
その私に「内緒だぞ」と子ども(孫)たちに餌を与える。
500円玉ならよくある話 で済むけれど。


資産はないよりはあった方がいい。それは分かっている。
でも私の親は遺し方が下手すぎた。
感謝の前に腹が立つ。