林間学校

我が母校には林間学舎がある。
中学2年と高校1年の全員参加の林間学校のほか、
部活や委員会での合宿に利用できる。


食事つき。三日分の献立は決まっていて、
一回目も二回目も初日はカツカレーだった。


中2の春、到着時におやつの袋が配られた。
いろいろ詰め合わされたアレ。「なんだ これは」
小学校の遠足でも、おやつは予算こそあれ自由に選べたのに
全員同じ袋詰めのお菓子。
「分けっこしたり交換したりして食べるのが楽しいのに」
何の意味があるんだと口々に言っていたが
すぐにわかる。


ご飯が美味しくないのである。
補うようにテーブルの中央に漬物の鉢が置かれているが
それだけでお腹一杯になるまでご飯を食べられるわけでもない。
楽しくなくてもおやつでお腹を黙らせるしかなのである。


運動部員は、林間学校中であろうが、
トレーニングをサボることは出来ない。
できることをできるかぎりやる。


水泳部員とて「プールがない」なんて言ってられない。
黙々と走り込み、筋トレをこなす。
当然、お腹がすく。
ご飯はお替り自由である。
漬物でどんぶり飯をお替りしていたが、漬物もなくなってしまった。
彼女は最後のひときれを食べた後、視線を彷徨わせた。


副校長と目が合った。
副校長は自分の前にあった、教員用の漬物鉢を差し出した。
「よかったら」


普段の食事もだが、ハイキングの弁当も笑えるものだった。
おにぎりときゅうり一本とコンビーフの缶。
私たちはお嬢さまじゃなかったっけ。


林間学舎は合宿も含めて3回利用したが、
何をやったか、何を学んだか、さっぱり覚えていない。
覚えているのは食事の内容だけである。